2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

なんでもいいよ

「ねえ、どこに行きたい?」 「どこでもいいよ、」 「ねえ、何食べたい?」 「なんでもいいよ、」 「ねえ、どっちが似合うかな?」 「どっちでもいいよ、」 「ねえ、何して欲しい?」 「なんでもいいよ、」 「ねえ、私のこと、どう思う?」 「どうでもいいよ、あっ。」 彼女はに…

泣き言は泣いてから言え

惰眠が襲う五時間目。 塩素に濡れた黒髪が汗と混じり首筋に張り付いている。 いやらしくて汗臭い妄想で脳みそを膨らます阿呆は 己の醜さを鑑みること無く、マドンナとのアバンチュールで頭がいっぱいなのだ。 下衆な悪友とポテトフライをつまみながら、世界…

ひねくれ者の独り言

どこぞの知識人が偉そうに言っていた。 「人が本当に死ぬ時、それは誰からも忘れ去られた時だ。」と。 脂がたっぷり乗った卑しさ満点の文化人は嫌いだが、その言葉に俺は唸った。 生い茂る青々とした葉も首を落とす時節に、俺は決まって郷里に赴く。 先頭に遅…

2000's

ブルー・トゥースから流れるローファイに耳を傾け、国道を走る俺達。 煙を蒸して、コンビニのホットスナックを コカ・コーラで流し込む。 今はすっかり狭くなった公園で スケートボードを走らせる。 爪先に穴の空いたオールドスクールを滑らせて 俺達は笑う…

不運な男

この世界は少し変わっている。 何でも彼らには、他人の頭上に数字が視えるというだ。 その数字は彼らの『寿命』を表しているらしい。 数字は日を跨ぐ毎に一ずつ減ってゆく。 要するに、頭上の数字が死ぬ迄の日数を示しているということだ。 別に、だからどう…

心象

砂塵が舞う此処は異世界。 枯渇した大地にはもう、何も芽吹かない。 タールに穢された真っ黒の海に流れ着く 硝子の瓶を拾い上げて、纏わる汚れを落として、 包みの紐を解く。 これで何度目だろう。 もう見えなくなった、どこかの誰かを待ち続けている。 この…

Rendezvous.

いつかの映画で観た逃避行を、 私達は駆けている。 据(しがらみ)の無い何処かへ、 私達は信じている。 口煩い大人達への宣戦布告を捧げ、 私達は足掻いている。 情けない言い訳はもう無しにしよう、 私達は蒸してる。 ロングピースの煙の行先を辿って、 私達…

拝啓、ジョン・ライドンへ

14歳の夏、俺はパンクに出会った。 最初は、なんとなく落胆したんだ。 大人達から聞かされていた素晴らしきクラシック・パンクは、俺には遅すぎたようだった。 理解したつもりで振舞っていても、心のどこかで 「こんなもんか。」 なんて思っていた。 それでも…

追討

一昨日の夜、ロック・スターが命を絶った。 まるで予行練習でも行っていたのか、 皆一様に、与えられた役割をこなし始める。 スクリーンには取って付けたような定型文が並び、 彼、或いは彼女の死を悼んでいる。 涙はいつの日からか流れず、 添えられた顔を…

傷だらけの天使

ミラーボールが厭らしく廻る、地下のライブハウス。 客席へと繋がる階段は、往年のグラビア・アイドルで敷き詰められている。 そこには、誰もいない。 踊っているのは、ピンクのライトに照らされた 歯車仕掛けのマネキン達。 ステージには、僕だけが立ってい…

産業革命

胸に煌めく黄金色。 着色された誇示の色はイミテーションに過ぎず、 その色は心の弱さに拠るものである。 燦然として見える其れは凡庸なセレブリティの賞賛を受け、レッドカーペットを闊歩する。 澄み渡る青い空さえも其れを讃え、肥大する顕示欲はとどまる…

プライマル・スクリーム

何時かの時代の、何処かの星。 大地に降りた一つの獣が、慟哭した。 獣には、護るものも、護られるものもない。 悪戯に消費されてゆく意味の無い虚無に、 苛立ちと悲哀を感嘆したのだ。 獣は、凡そ(おおよそ)自身を護る枷があるのだと 信じて大地を進んだが…

雑種

何て広い世界だろう。 何て苦しい世界だろう。 そんな世界の片隅の、僅かな隙間に産まれた私は 中途半端な混ざりものだ。 それはまるで、余った布を乱雑に縫い合わせた ちぐはぐのドレスのよう。 みんなに罪はなくとも、悪びれることはなくとも、 たとえヒッ…

今際の懺悔

日本の某所にある拘置所。 近々、私が此処へ配属されて十年になる。 此処は特別な場所だ。 この国で最も重い罪が"執行"される場所なのである。 この仕事に就き、私は数多の罪人の終わりを見送ってきた。 放火を行った者。 人を欺き、大金をせしめた者。 怨恨…

恥ずかしがり屋のブギー・バック

高い空の中で雲が動いている、晴れた日の夜。 僕は自分に問い、君に答える。 こんな気持ちは初めてだ。 今までなかった、二度とないかもしれない胸の高鳴り。 僕は今自分が分からない。今までのことも、これからのことも。 大人びたつもりが、僕は真っ赤に熟…