DAWN

 

むくり、と体を起こすと

世界が死んでいた。

 

荒涼の大地の至る所に吹き飛ばされた鉄道が整然と突き刺さり、それはまるで、死に果てた大地をこの世に繋ぎ止めるための楔であった。

 

鉄道の楔の間隙を進む。

 

僕の友人がいた。

 

友人は私にこの状況と、人々の様子を端的に説明した。

 

息絶えた人々は楔の鉄道に押し込められ焼却され、

 

残された人々は僅かな"生きた"大地を探し

輪になって慟哭していた。

 

慟哭の中心では儀式が起こり、

儀式は彼らを救い、傷付けた。

 

街に、自然にあった無数の音が消えた為に

人々の悲鳴だけが、この世界にあった。

 

生きた大地に茂る蔦を掻き分けながら、進んだ。

 

僕の故郷があった。

 

故郷は生きていたが、増殖した植物に侵され

形はなくなっていた。

 

声が聞こえた。

 

微かに思い出せる、懐かしくもある声。

 

静かな悲鳴がこだましている。

 

声の主を辿ると、僕の母がいた。

 

痛々しく、窶れ細った母の傍に身を屈めて

手を握った。

 

温度は無かった。

この世界から無くなったのか、僕に無くなったのかは分からない。

 

母の顔を見て、母に答えようとすると

 

激しく優しい眠気が襲いかかり、僕は微睡みに身を委ねた。

 

この世界は刹那の夢か、僕の終わりなのか。

 

またしても分からず終いであった。

 

おやすみ、またあした。