2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

進化

萌動する麻の茂みを越えて、野に咲く色とりどりの花や虫を見つけては踏み潰して回った。 かつて生を孕んでいた、萎れた雑草に造花を突き刺して嗤う。 丘を越えて、林道を潜り、辺り一面には透き通る様な鈍色の湖があった。 隠されていたのだろうか。これは自…

あなたへ

僕は、あなたに伝えなければならないことがあります。 本当にごめんなさい。 ブラックコーヒーを口に含み、咥え煙草の煙と混ぜて口で転がす。 毎日が肌寒く感じられて、僕はどうにもならないのです。 あなたが待つこの家に帰って、それはとても暖かいのです…

空色

昼食の後、五限目の美術。 並べられた不揃いな僕達は皆、画用紙を睨む。 それぞれの世界を振り返り、その一部を切り取って は、目の前の真っ白な紙にイメージを写す。 僕は何も浮かばなかった。 ただひたすら、ぼうっと空を目で追う。 僕は、何でもない日常…

リチウム

ウォシュレットの水勢を上げた。 臀(しり)に自生した吹き出物が波打ち、思わず声を上げそうになる。 噯気(おくび)に吐瀉物が混じり口元を手で覆おうが、それももう手遅れである。 空き瓶と吸殻、ドリトスの欠片でこの部屋のフローリングは埋め尽くされている…

午前1時

夜の冷たさが、僕をホットコーヒーへ導く。 淋しさを消し去る街灯の下で、胸ポケットから取り出した煙草に火を付けた。 何の気なく空を見上げていると、随分と"出来上がった"様子のおじさんが、よたよたと歩きそのまま僕の横へ腰掛けた。 「見えるかぁ、坊主…