傷だらけの天使

ミラーボールが厭らしく廻る、地下のライブハウス。

 

客席へと繋がる階段は、往年のグラビア・アイドルで敷き詰められている。

 

そこには、誰もいない。

 

踊っているのは、ピンクのライトに照らされた

歯車仕掛けのマネキン達。

 

ステージには、僕だけが立っていた。

 

顔には涙の化粧をして、学生帽で傷んだ髪を隠している。

 

ボロボロのセットアップには鎖が光り、

血塗れた旭日旗が覗いている。

 

いかれた格好の僕は、満面の笑顔で唄う。

 

全ての苦しみから、傷だらけの青春から解き放たれるように。

 

僕を吊るす糸を腐らせて、断ち切るために。

 

笑顔のマスクに、粉を含んだ黒い涙が落ちてゆく。

 

それでも僕は、笑って唄う。

 

僕が僕であるために

 

僕が僕を救うために。

 

僕が僕を失わぬように。

 

僕の僕による僕のための、僕だけを救う唄。

 

 

さようなら。

土臭くて醜くて、

一番汚くて、一番美しい

 

僕だけの青春。