拝啓、ジョン・ライドンへ

14歳の夏、俺はパンクに出会った。

 

最初は、なんとなく落胆したんだ。

 

大人達から聞かされていた素晴らしきクラシック・パンクは、俺には遅すぎたようだった。

 

理解したつもりで振舞っていても、心のどこかで

「こんなもんか。」

なんて思っていた。

 

それでもセックス・ピストルズは、俺に見せてくれたんだ。

 

パンクの門を叩いた俺に、

「こんなもんじゃねえぞ。」

って教えてくれたんだ。

 

ある年の夏。

平成が終わって久しい、俺はハタチになった。

 

俺はすっかり、パンクになったつもりでいた。

 

狭い部屋の、近い天井と壁のシミを目で追ううちに

 

 

俺はパンクを知った。

 

 

それはヤク中の真似をすることでもなく、

モッズコートを羽織って腕を炙ることでもなく、

髪を傷めることでもなく、

殴り合うことでもなかった。

 

俺は見つけた。

 

分かっている振りを続けていた俺は

パンクを見つけ、パンクに生かされていた事に気が付いた。

 

俺はギターを握らない。

 

俺は歌を歌わない。

 

それでも、パンクでいられる。

 

 

もう大丈夫。

俺は大人をやめたから。