心象
砂塵が舞う此処は異世界。
枯渇した大地にはもう、何も芽吹かない。
タールに穢された真っ黒の海に流れ着く
硝子の瓶を拾い上げて、纏わる汚れを落として、
包みの紐を解く。
これで何度目だろう。
もう見えなくなった、どこかの誰かを待ち続けている。
この世界には何も無いのに、落ちた月を見る度に
何故か期待をしてしまう。
今日も鉄くずの浜辺を歩く。
セピア色の風景に黒を差す、
不運の波に打ち上げられた屍。
もう、此処には誰もいないんだと、
空は告げていた。
私は、私だったものに別れを訃げる。
今日は珍しく、潮風が吹いている。
落ちた月は、もう無くなっていた。
山を目指して、旗を掲げて、
"私"は歩く。