宣戦布告
秋。あんなに陽気だったお天道様が
今では少し気だるげな様子。
Tシャツだけじゃ肌寒いけど、
ジャケットなんか着たくない。
隠したいものなんて、もう何も無いのだから。
大人も寝息を立てる夜。
僕はちょっぴり背伸びしたくなった。
憧れのロック・スターも、今夜だけは許してくれる
今宵の約束は僕と君だけのもの。
ポケットにはコインと、
くしゃくしゃになったハイライト。
息を吐く音さえこだまするような冷たい夜道に、
消えかけのネオンが恭しく光る。
あの駅のプラットフォームで君は待っている。
加速してゆく心拍数はまるで静寂のコントラスト。
『遅かったね。』
君はわざとらしく悪態をついてみせた。
この街にやってくる最後の電車に乗って
今日、僕達は大人になるんだ。
君はさながらメーテル
銀河鉄道じゃ遅過ぎる。
『ねぇ、私たちどこまで行けるかな』
君は呟く。
僕は車窓を眺めながらこう言った。
「今の僕と君なら、どこまでも行けるさ」
僕達はこれから
女神のドレスを盗みに行く。