藍色
潮騒のインディゴ。
温くてしょっぱいこの街の風が、なぜか僕達を甘くする。
深いようで浅く、僕達はひとつになる。
潮風ですっかり錆びた、アコースティックのアルペジオは重いようで軽く、
僕達は唄っているね。
波打ち際の棄てられたラジオが、今にもナインティーンに連れて行ってくれそうで、
僕達は可笑しくて、嬉しかった。
でも君はいつか、この漣に攫われてしまいそうで
抱き寄せようとしても、そこに君はいなくて。
だから毎日、何度も何度も
自分に言い聞かせているんだよ。
こんなに平和で静かな海が、いつか大きな魔物に変わって
この世界を失くしてしまうだろう。
それでも僕は唄って、最後まで君に聴かせたい。
恥ずかしさで、僕は溢れそうになった。
思わず、君に凭れて頬を合わせる。
ぼうっと眺めていた海岸に建つ、子供たちの砂の城が
淡い白波に溶けてゆく。
凪の柔らかさが、二人を包む。
きらきらと反射する夕陽が、僕達を縁取っている。
僕はまだ、この海の蒼さに勝てそうにない。