しあわせ

こじんまりした喫茶店

今日も私はほっとひと息。

 

咥え煙草の老人を

一瞥してから扉を開ける。

 

12世紀のオートマタは

褪せた眼で虚空を眺める。

 

めくる頁に染み付いた

何処かの誰かの好奇心。

 

くすんだ檜の木目に残る

わんぱく坊やの引っ掻き傷。

 

どんなに埃臭くても

きっとまた吸い込まれる。

 

機械仕掛けの生活に

榛(はしばみ)色を垂らしてみたい。

 

懐古との邂逅、それはきっと

 

明日も誰かのほっと一息。