手記:22世紀の精神異常者
この世界は辟易している。
超高度文明がもたらす廃棄物汚染
こさえた髭が香ばしい独裁者による圧政
選民思想の副産物たる資本の奴隷達
人民を業火へと誘発する為のプロパガンダ
まるでキューブリック・フィルムの様な地獄だ。
正常を維持した人民達は、己を歯車と心得、
異常を来たした賤民達は、アシッドがプロデュースする幻惑に陶酔する。
錆が零れ落ち腐敗を露呈した体制への忠誠と隷属だけが、処方される唯一の解毒なのである。
血清を打ち、見事人民へと帰還すれば
貴方も運命共同体の一部だ。
膿を出し尽くす事なんて不可能。
確約された悲劇を夢想し、エンドルフィンとドーパミンの儀式を催すのだ。
信仰は廃れた。人民に偶像は不要であり、己を信じる事は人民を、果てには総帥への忠誠へと繋がる。
"個"と"全体"に境界は無く、秩序と調和のメルトダウンは逃避と乖離のレペテイションへと起因しているのだ。
だが、終焉は近い。
歴史からの教訓を放棄し、あらゆる人理の軌跡を燃やし尽くした体制にはつけが回るのだ。これは詭弁では無い。
失われた先史のノンフィクションが証明してきた"人理の自浄作用"なのだ。
ファシズムに未来は無い。
定礎されたエントロピーは分裂を引き起こす。
残されるのは崩壊のみ。嘗てベルリンと呼ばれた街のように。
それまで私は此処で見守る事にした。
私は恒久の帳の中、不可思議の幻覚において邂逅した
汎人類史にて言及される"神"とのアセンションを果たしたのだから。
光をこの手に、闇はあの世に。