デッドパンズ
明くる日も明くる日も、夢から覚めないような感情に襲われる。
シェフが作ったブランチをほおばった日も、
高い空に燦然と輝く星を眺めた日も、
愛のないセックスをした日も、
私達は不感だったのだ。
ふわふわと浮遊している、心は何処かに吹き飛んでしまった。
行き交う言葉も、差し出された好意も、向けられた刃も、全て体をすり抜けて向こう側へ飛んでゆく。
すり抜ける人達を俯瞰する。
私達は確かめることをしない。全てが無意味だと分かりきっているから。身に振りかぶる、あらゆる幸も不幸も知らない。
人々には「鈍感だ」と詰られ、私達を愛していた人々からは「最低。」と投げかけられた。
私達は彼等とは違う。人は皆何処か違っているが、私達は「私達以外」と違うのだ。
属することが出来ないのだから。
しかし、そんな事は考えたくないと思ってしまう
自分を不思議に思ってしまうのだ。
この感覚は何なのか。この感覚は何処にあるのか。
私達は人生を辿る。
通り過ぎてきた道の途中に
私達の"忘れ物"があると信じて。