濁り
へとへとの帰り道。
それでも私は、一生懸命頑張っている。
毎日を生きている。
道は違っていても、辿り着く場所は貴方と同じ。
私たちだけの帰る場所。
貴方さえいれば、私はどんな辛い事も乗り越えてゆける。
部屋の明かりは付いている。貴方がそこにいるから。
足早にアパートの階段を駆け上がって、玄関のドアに手を伸ばす。
鍵はかかっていた。
鍵を開けるといつもの彼が迎えてくれた。
いつもと違う、私の知らない灰色のセーターで。
柔らかくて優しい貴方の顔が、いつもみたいに私に微笑んでくれる。
二人でご飯を食べて、缶ビールを飲んで、毎週欠かさずに録画している連続ドラマを消化して──。
募るストレスをシャワーで洗い流して、今日を精算する。
ベッドにはいつもみたいに、癖っ毛の貴方が待っている。
身体を委ねて、唇を重ねて、心を裸にして、貴方を信じて。
愛し合った後には、決まって貴方が先に眠ってしまう。
はだけた布団を手繰り寄せて、貴方を追いかけるように眠る。
暗がりの部屋、
貴方の携帯に浮かびあがったLINEのメッセージと、私のじゃない、ピンク色の付け爪に目を瞑って。
おやすみなさい。