リチウム

 

ウォシュレットの水勢を上げた。

 

臀(しり)に自生した吹き出物が波打ち、思わず声を上げそうになる。

 

噯気(おくび)に吐瀉物が混じり口元を手で覆おうが、それももう手遅れである。

 

空き瓶と吸殻、ドリトスの欠片でこの部屋のフローリングは埋め尽くされている。

 

壁にこびり付いた何かの体液を拭って、瓦解した小説の山を除けそこに体を横たえた。

 

耽たところで、何かを考えるような気力もない。

 

記憶を必死に辿るが、何処から始まったのかさえもう分からない。

 

寄る辺はなく、明くる日も明くる日もまた夜を待つ。

 

持ち上げた腕にぽつぽつと残る注射痕に目をやり、行き場のない溜息をついた。

 

無気力で、やりきれなさでいっぱいの俺を、非情な鏡が映し出す。

 

手に取った、何か硬いものを投げ付けたが、不幸にも鏡は割れなかった。

 

いやに頑丈な姿見の奥で、奴-恐らく神に近い何某か-が嗤っている。

 

呆れた。何も言えやしねえな。

 

手探りで掴んだ、クッションの傍に転がっていた容器を手にし、キャップを開け、

 

俺はまた、噛み砕いた。

 

酩酊の中、滴る唾液を拭うと

 

奴は俺の目の前にやってくる。