あなたへ

 

僕は、あなたに伝えなければならないことがあります。

 

本当にごめんなさい。

 

ブラックコーヒーを口に含み、咥え煙草の煙と混ぜて口で転がす。

 

毎日が肌寒く感じられて、僕はどうにもならないのです。

 

あなたが待つこの家に帰って、それはとても暖かいのですが、

 

僕は何故だか、さみしいのです。

 

悴んだ身体を暖めて、大好きなあなたに触って、僕はあなたと重なるのですが、

 

僕はそれでも、虚しいのです。

 

積み重ねた日のぶんだけ、一つの鍋を二人でつついたぶんだけ、あなたの柔肌を感じたぶんだけ、

 

僕は、僕は報われないのです。

 

あなたが寄せた肩を撫でて、僕は思う。

 

色々なことがあって、僕たちはその上に立っている。

 

累ねた時間に思いを巡らせて、変わってしまったあなたを知って、

 

毎晩、君を覗く度に

 

僕は今日も、昔のあなたを抱いていると解るのでした。

 

頬を涙が伝う。

 

幕を下ろすように、僕はそっと目を閉じる。

 

今までありがとうございました。

 

 

「さようなら。」