もう聴けなくなったもの
俺はもうNIRVANAを聴けない。
「聴かない」のではなく「聴けない」。
清算したい過去を思い出させるし、あの時の自分が脳裏に浮かんでひどく自己嫌悪になる。
決してバンドがカッコ悪くなった訳じゃない。何十年経とうと俺みたいなティーンにはNIRVANAは刺さるし、ゆめゆめ朽ちることは無い絶対的な"カッコ良さ"があると思う。
俺は「卒業」したのかもしれない。
羨望や陶酔を越えた、崇拝に近い感覚をカートに感じていた。俺の世界の全てだったし、世界そのものだった。
だけど本当は違う。
誰の心にも青くて臭くて、痛々しくて目も当てられないようなジブンがいる。
そんな俺が、醜くてどうしようもない俺が今もあの衝動を求め続けている。
俺はカートの呪縛から逃れる事は出来ない。
カートの死には意味なんかなかったかもしれない。
意味を見出すのはいつどんな時代も、結局他人なのだ。
きっと今でも、何処かの誰かの"絶対"であるだろう。そして多分何年か後に同じ思いをする。
それでも結局忘れられないのだ。
生き続けるのだ。
蝕み続けるのだ。
多分"呪い"なのだ。