2020-09-05から1日間の記事一覧
土砂降りの雨、路肩に停めた車の中で煙草に火をつける。 疲労感に満ち満ちた、充実とは程遠い毎日の中で 僕は知らず知らずのうちに君を求めているのかもしれない。 君と交わる間だけは、僕は全てを忘れ去ることが出来る。 君と交わる間だけにしか、僕は満た…
オーバーコートを羽織って、お気に入りのバゲットを買いに街へ出掛けよう。 街路樹にはイチイの実がたわわに実り、花壇の花々は揚々と太陽へアヴェ・マリアを贈る。 鳥たちは自由気ままに空を舞い、路地を歩く小綺麗なヨークシャーテリアは楽しそうにスキッ…
愛する人に死ぬまで憎まれる事は、きっと辛いだろう。 しかし、この世で最も苦しく、残酷な事は 自分さえも許す事の出来ない自分を、愛する人に許され続ける事だろう。
頭が真っ白だ。 たった今彼女から告げられた言葉に動揺し、僕は何も考えられない。返す言葉もどこかへ忘れてしまった。 途端に、彼女が遠い遠い何処かへ逃げ去ってしまった様な気分だ。 僕は過ちを犯そうとしている。 この衝動はたとえ、ギターをアンプに突…
月曜日は湖畔に佇む白装束の女が、睡蓮の花を渡る。 火曜日は甲冑を着た男が、古城の壁を叩き壊して追いかける。 水曜日は山奥のモーテルに潜む殺人鬼に、命を賭して立ち向かう。 木曜日はコンピューターに支配されたバベルの塔から、愛する人を殺せと命じら…
正午を過ぎて、陽の光が脳天を貫く頃。 五月蝿い蝉のがなり声に叩き起され、俺の体は目を覚ます。 煩わしさを押し殺して精一杯目を擦り、必死に身体へ動けと命令する。まるで自分のものじゃないみたいだ。 気の抜けたぬるい三ツ矢サイダーを一気に飲み干し、…