嗚呼、素晴らしき人生

オーバーコートを羽織って、お気に入りのバゲットを買いに街へ出掛けよう。

 

街路樹にはイチイの実がたわわに実り、花壇の花々は揚々と太陽へアヴェ・マリアを贈る。

 

鳥たちは自由気ままに空を舞い、路地を歩く小綺麗なヨークシャーテリアは楽しそうにスキップしているようだ。

 

いつもは見えなかったあの屋根の上には、可愛らしい風見鶏がくるくると回っているではないか。

 

高いビルの向こうには市場が賑わい、集まる人々は活気に満ち溢れている。

 

今の身軽な私なら、あの気球船ににさえ手が届いてしまいそうだ。気持ちが昂り、思わず身体が動いてしまう。

 

踊ろう。思いのままに。この世界の美しさを、ありったけ表現しよう。

 

透き通るような景色だ。陽の光を遮る屋根も、四方を囲み圧迫する壁も、ここには無い。

 

嗚呼、素晴らしき世界。

 

こんなにも素晴らしき世界が、永遠であれば良いのに。

 

主たる神に、この上ない賛辞の言葉を送ろうじゃあないか。

 

『この世界に、さようなら。』

 

グシャッ。