千潮

 

日照りの海で、私はあなたに溺れた。

 

渦の中で藻掻く私を、魚達は嗤っていた。

 

あなたは私の手を引き、あなたの中から掬ってくれた。

 

私の中のあなたが質量を持って、それが錘になった。

 

そんな私を掬った貴方の名前を、今はもう思い出せない。