ひとりおぼろげ

 

酩酊の中、いつの間にか繁華街を抜けていた。

 

揺れる枯れ枝が、ぱきりと落ちる。

 

ぼんやりと路地を薄く照らす提灯を提げた店がひとつ、ふらふらと吸い込まれていった。

 

客はいない、頬杖をつきブラウン管を眺めていた老婆が、せかせかと厨房へ戻り「いらっしゃい」と声をかける。

 

カウンターの隅に腰を下ろし、ジャケットを壁のハンガーへ掛けた。

 

ウーロンハイと酢の物が運ばれる。

 

老婆の真似をして、箸をつつきながらブラウン管を眺めていると、おいおいと意識を取り戻した。

 

「またこのニュースだ、全く世知辛い世の中だねェ。」

 

婆の独り言に、こくりと相槌をひとつおくる。

 

茶割りのほろ苦さが舌に残る。

 

からん、と氷がぶつかった。