ゾンビの休日
ヘネシーに溶けた氷が
ぶつかり合って音を立てる。
針を落とした十二インチから流れる
クラシック・ロックに酔いしれる。
泣き言は言えない日々の中で
唯一、孤独という名の悦に浸る時間。
微睡みの中で脳を揺らして
噤んだ口を開いて、フレンチフライをつまむ。
ブラウン管の奥では名前の知らないメイド服姿の少女が、ワルサーに銃弾を込めている。
ある種の様式美なのだろうか。
停止しかけた思考では、もうこのフィルムを理解出来そうにない。
部屋にチャイムが鳴り響くが
すっかり我関せず焉といった様子。
どうか、邪魔をしないでおくれ。
今はそういう気分なんだ。
ここにあるもの一つ一つが、今ここにあるものだけが最高だ。干渉は要らない。
独りだが、一人じゃない。
酒に吞まれ、煙を焚いて、芸術と交わって
メランコリックな海で溺死する。
ぎりぎりで生かされ続ける、私に唯一許された
一夜限りの死。