青紫の部屋
ここは青紫の部屋。
満たされる煙と、揮発したアルコールが交錯する妖艶な空間。
ここには俺一人。何人たりとも寄せ付けやしない、
俺だけの空気、俺だけの時間。
伸ばした手は光を掴み取り、何か大切なものを落とす。これは代償なのだろうか。
ハンガーに掛かったヴィンテージのTシャツは
この空間を演出する役者の一人であるかのように振舞っている。
口に含んだ黒い液体は喉を通り、
胃の奥底に沈む。
それは鉛のように重く、中々離れてはくれない。
此処で何をしているのか、俺には分からない。
長い間、浸かり過ぎてしまった。
高揚感だけが俺を動かし、副作用は俺を沈ませる。
俺を孤独にさせる。
此処で得られる幸福も、此処で手放す絶望も
全ては瞞し。
十ミリ四方の紙切れが
俺に教えてくれた真実。
バブーシュカを巻いた夫人が、欺瞞と侮蔑を孕んだ笑みを向ける。
真実なんでどうでもいい。
投げ出したそれはこの世界で最も苦しい
副作用をもたらすのだ。
絶望はここで終わりにしよう。
俺は不必要なそれを、
ティッシュペーパーに包んで捨てた。