いし
ある時は路傍に散らばり、ある時は河底に沈み、またある時は様々な形に変わり、人に与した。
それは堂々とそこにあって、浅ましき私たちの生き様を諦観している。
鳴く事もなければ、己を主張することもない。ただそこに在る、"存在の結晶"。
それは美しい。
ある時は潮に浮かぶ古城のように、
ある時は森に佇む黒い絵のように、
ある時は伽藍堂の奥で微睡む涅槃像のように、
ある時は数多の人生を呑み込んだ処刑場のように、
それは美しい。
泥に塗れても、その身を削られても、決して輝きを失うことはなく、私を魅了し続ける。
私はそれの正体を知らない。
でもそれはきっと、私たちの理解から最も程遠いものだ。
それは形而の奥で待っている。
電波の砂漠を泳ぐ、私を待っている。
揺蕩いて、揺蕩いて。